2013年01月15日

『演劇とは何か』ー鈴木忠志

先日、鈴木忠志著『演劇とは何か』を読み返したのですが、

一番印象に残ったのが、
日本の演劇人のあいだにある「リアリズム=日常を舞台にのせること」という誤解。
という部分。(結構古いお話で恐縮です。。)

演劇は決して日常の一部を切り取って舞台にのせるものではなく。

たとえばチェーホフの戯曲は、
「その時代のロシア貴族の日常」を描いたもの

なんかでは決して無く、 さまざまなしかけがほどこされている。

この戯曲を通してあるテーマを伝えるために、チェーホフは「リアリズム」という手法がもっとも最適と思ったから、そういうふうに書いただけであって、

そのテーマを伝えるために、もっと良い設定があれば、
そちらを採用しても別に良かった。

それが、「ロシア貴族の日常」なんだこれが!と誤解されてしまったのは、
チェーホフとセットになって紹介される、
役者のトレーニングの1つ「スタニスラフスキー・システム」が、
役者の感覚の記憶やらなんやら、
「日常」からその役者技術を体得しようと、いうアプローチなのだー、
という誤解のもと、日本に最初に輸入されてしまったから

なのさ。

これも、「日常」はあくまで入り口であって、
そこからいかにイマジネーションを掘り下げるか、新しいものを生み出していけるか、ということこそが役者の技術であり、伸ばしていかなければならないスキルなのだけれど。

その「入り口」でストップしているのよね。

というのが、最近若いみなさまと演劇させて頂いている、ほりうちの感想。

こないだメンバーの1人が「自分はストックが少ない」ということを言っていて、

そうじゃなくて、
いまここで生もうよ!
というアドバイスをさせていただきました。

最終的には「クリエイション」に向かっていく、ためにやるのが稽古なのです。
もちろん稽古初期には、戯曲の解釈、そういうところに焦点が当たっても良いけれど。


最近なにやら札幌の演劇では、既存戯曲をやろうという動きが熱いと、
ほりうちは感じているので、
ぜひぜひ、
このへんを意識した楽しい作品がたくさん生まれていくことを期待しておりますー

ダンス、フィギュアシアター、現代アートの作品創りの中では、
結構このような考え方は感じられるのです。

演劇もここを深めた作品創りをほりうちはしていきたい。
(という妄想。←)

ただ舞台にダンスが出る、人形が出る、美術が美しい、
そういった表面的なことだけで「コラボ」というんではなく、
そのアートの「思考過程」を取り入れていきたい。

コラボでなくフュージョン。

そのためには、ダンスにもアートにも、
演出家自身がもっともっと精通していかねばならないのだ。
わーん。

今年のほりうちの目標そこです。


演劇の、

リアルさは入り口として、

そこから新しい世界を構築していきたいものです。





『演劇とは何か』
鈴木忠志 著
岩波書店(岩波文庫)
ISBN-10: 4004300320
ISBN-13: 978-4004300328
発売日: 1988/7/20
演劇が現代に対して持つ意味は何か。その可能性はいかにして切り開かれていくのか。本書は世界的に活躍する演出家が具体的な実践にもとづいて展開する演劇論である。著者は演出・演技の方法、劇団という集団の持つ意味について独自の考えを展開し、活動の拠点・富山県利賀村から、文化の国際交流がいかにあるべきかを提言する。

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posted by 研究員まゆ at 07:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月27日

『現代戯曲の設計―劇作家はビジョンを持て!』 ーゴードン ファレル その2

前回の続き。

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現代戯曲の設計―劇作家はビジョンを持て!
著:ゴードン ファレル 翻訳:常田景子
日本劇作家協会


ひとまず覚え書きです。

リアリズムのビジョン
→この世界の問題は、人間が行動を起こすことで理解し解決することができる。

叙事詩劇のビジョン
→この世界はある道徳律に支配されているが、人間はそれを知ることはできない。

ブレヒト劇のビジョン
→個人による変革は幻想に過ぎない。真の変化は人々が集団として力を合わせたときに初めて可能となる。
(そのことを、演劇を通じて「理性的に」観客に思わせることが目標←感情に訴えるのではなく)

自然主義のビジョン
→この世界は人間ではどうしようもない力によって支配されている。
 その力は、科学的手法によって解明できる。

不条理劇のビジョン
→この世界では、人間は何も変えることはできないし、何も伝えることはできない。
 人間にできることは、ただその無情な時間をやりすごすのみだ。

ロマン主義のビジョン
→人間の感情こそが重要である。とりわけ重要なのは愛である。愛のために闘うことこそ最も意義がある。

表現主義のビジョン
→世界を突き動かしている力は、従来の論理では理解も説明もできない。
 最も重要な真理は、非合理で説明のつかない人間の「精神」の中にあり、それが世界を変化させる。

シュルレアリスムのビジョン
→見せかけの世界の表面下で動いている力は人間の「衝動」であり、これを舞台に再現することが目標。
(そのためにさまざまなイメージを並べてみせる。)


こんな感じだと思うのですが、
みなさんに伝わりますでしょうか?

あとはそれぞれのビジョンを舞台で実現するための構造であったり、テクニック、
これらのビジョンに属する戯曲に共通して見られる特徴などが本著では述べられています。

もちろん、実際の戯曲ではこれらのビジョンや構造、テクニックが
複合されて描かれている場合も多いとのことです。

勉強になりました・・・


ひとまず。

この本で紹介されている戯曲を全部読むことが
次の目標だーい。(全部で66作品あるけどねっ 涙)
posted by 研究員まゆ at 18:01| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月22日

『現代戯曲の設計―劇作家はビジョンを持て!』ーゴードン ファレル その1

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現代戯曲の設計―劇作家はビジョンを持て!
著:ゴードン ファレル 翻訳:常田景子
日本劇作家協会

先人劇作家たちが、改革、実験という試行錯誤のすえ編み出してきた典型的なテクニックを読み解き、作劇の要、「ヴィジョンを戯曲という形で構築するための理論」を徹底解説。劇作の「構想」のテクニックを分かりやすく説明した、劇作技術のマニュアルブック。
ブロンズ新社HPより】




さて。
前回、戯曲を書く勉強する!と公言(妄言?)したわけなのですけれど。
単純な私は、日本劇作家協会のオススメする本から、とりあえず読んでみることにしました。

でも、これがね、
良かったのですよーー

タイトルに「劇作家」と銘打ってありますが、
演劇をしっかりやっていて、
いま自分の立ち位置を模索しているような方にかなりオススメ。
(←たとえば私のような)

これを読めば、
ようし演劇について勉強するぞ!と意気込んじゃって、
いきなり演劇史の本から読み始めちゃったりして、
挫折しちゃうようなこともなし。
(←そう、たとえば私のような)

まだ途中までしか読んでいないので、
目次から推測するのですが、

リアリズムから始まって、叙事詩劇、ブレヒト劇、
自然主義、不条理劇、ロマン主義、
そして表現主義とシュルレアリスム

と結ぶようです。

これを読むと、
「何が正しい演劇で、何が正しくない演劇なのか」
ではなく、

自分の立っている 演劇の ”ビジョン” はどこなのか?

また、演劇作品を見た時に、

この作品の ”ビジョン” はどこに向いているのか?

という視点で、作品を捉えられようになると思う。

特にね。

あまり演劇経験が少ない若い人だと、
最初にいた劇団なり養成所なりの演劇ビジョンが「絶対」
になりがちだから、
そして、そこのトップの人たちがわりと親切なおじちゃんおばちゃんたちでないと、
あくまで ”うちは”これなの、
ということを教えてくれないから、
盲目的になりがちになってしまうからね。

こういう本を読んで、自分のいまやっていることの「立ち位置」、
客観的に見たら良いと思うのよ、まゆおばちゃんは。

あと、違う ”ビジョン” の劇団なりユニットなりに参加する機会があった時も、
「ああここはこのビジョンなんだな。」と
稽古の先行きが見通しやすいとも思うのよ、まゆおばちゃんは。

芸術に絶対は無いからねー

とまあ、そういうことに気づかせてくれる本でした。

まだ読了していないので、ひとまず。

この本については、
またアップしたいと思ってます。
posted by 研究員まゆ at 01:53| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月11日

『演技と演出のレッスン』ー鴻上 尚史

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演技と演出のレッスン ─ 魅力的な俳優になるために
著者:鴻上 尚史 白水社 2011年出版

大好評シリーズ、待望の続編!
俳優の仕事とはなんでしょう?(中略)
著者による明快な定義は―俳優の基本は「作者の言葉を観客や視聴者に伝えること」です。(中略)
本書には、どうすればその「テクニック」が効率よく獲得できるか、誰にでもわかるように書かれています。演劇のトレーニングで世界標準とされる「スタニスラフスキー・システム」をベースに、著者ならではのノウハウ&エクササイズが満載。
大好評ロングセラー『発声と身体のレッスン―魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために』の続編! アマチュアからプロまで、表現力を豊かにするための、演技のバイブルついに登場。映画監督・堤幸彦さん推薦!
白水社HPより 一部抜粋して転載】


「発声と身体のレッスン」のご紹介の時にも書きましたが、
本当に著者 鴻上さんの本は、出典が明らかでありがたい。
読んだ人が疑問を持ったときに、
出典をたどって深く学びなおすことができる。
「俳優修行」とか、出典を読む前に、一度本著を読むのもおすすめです。
基本的に、訳本は表現とかがやたら独特で、???となる場合が多いのでね。

後期スタニスラフスキー・システムに基づいた
ワークショップの例もわかりやすいので、
これから取り入れていこうと思います。

で、
それとは別にほりうちが印象深かったのが、
終わりに少し触れられている芸術論について。

前回ほりうちがレポートした、
米屋さんのセミナー(@AB)の中で話題になっていた、
日本の「芸術のお稽古ごと」化について、
鴻上さんは積極的に「良いもの」として捉えられてます。

それは、
芸術には2方向あって、
頂上を引き上げる芸術と
すそのを広げる芸術の
両方が、芸術の発展には欠かせないということ。

トップクラスの芸術家たちが、
その分野の芸術を牽引して高めていくのはもちろん大切だけれど、
市民や学生、社会人、数多くのアマチュアが、
芸術活動を積極的に行うことで、芸術を広げ普及させ、
身近なものにして、底あげをしていくのも大切なことなんだよ、と。

おお!
これって、
ダンス分野におけるコミュニティダンスの主要な考え方の1つと一緒やないですか!

「市民劇団」に公的な助成をする必要があるのか?
という声も、セミナーでは聞かれていましたが、
市民活動には市民活動の良さがあるのですね。

そしてもうひとつ。
演劇には「芸術」と「芸能」の
2つのベクトルがあるということ。
このどちらに、より立ち位置を持ってくるかで、
作品が変わってくるということ。

そうなのです。
ほりうち及びさっぽろ演劇研究室が目指しているのは、
この「芸術」に札幌の演劇を近づけていきたいとゆー
ことなのです。

あいかわらずのビッグマウスですがー。

せっかくなので、
改めて表明してみましたー。
過去記事:アートとしての演劇

posted by 研究員まゆ at 05:37| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月30日

『表現力のレッスン』

『表現力のレッスン』

著者: 鴻上尚史
発行年月日:2005/10/20
サイズ:四六判
ページ数:238
ISBN:978-4-06-212908-4
定価(税込):1,470円

(講談社HPより)
本物の「かっこよさ」は表現力で決まる!!男度・女度をアップさせる鴻上式レッスン
<あなたの表現の常識を変える20のレッスン>
1.体の緊張を自覚する/2.体と出会う/3.体で遊ぶ/4.声と出会う/5.声を知る/6.声で遊ぶ/7.五感を刺激する/8.感情と感覚を刺激する/9.感覚・感情で遊ぶ/10.他者と付き合う/11.相手の体を知る/12.体で会話する/13.自分と相手の体を感じる/14.視覚を意識する/15.歩き方を知る/16.体で物語を創る/17.体で表現を創る/18.体で表現を楽しむ/19.物語を創ることを楽しむ/20.声の表現を楽しむ


本著は、そもそも「表現力」とはなんぞや? という人に、「表現力」を身につけるための考え方の基本を伝え、「表現力」についての視野を広げるための本であると思う。
さまざまワークショップを通して、今まで見て来なかったり、こういうものでしょ、と決めつけてしまっていたものの見方を、もっと追究して、新しい見方を発見しよう、ということだ。
著者も本著内で一部語っているが、こういったワークショップをするときに非常に大切なのが、楽しみ、前向きにやること。そして受講者が受け身にならないことである。
ワークショップ内で扱うことが、人間の内面に関することだけに、ただこなす、やらされているという状態では、いくらやっても決して得るものはない。
ワークショップを主宰する人間にとっては、そこが難しいところ、とも思う。
posted by 研究員まゆ at 19:59| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『発声と身体のレッスン―魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために』

『発声と身体のレッスン―魅力的な「こえ」と「からだ」を作るために』

鴻上尚史 著
白水社
税込価格 : 1785円 (本体価格1700円)
ISBN : 978-4-560-03566-5
ジャンル : 芸術/演劇・芸能
体裁 : 四六判 並製 289頁
刊行年月 : 2002-04


(白水社HPより)
俳優、声優、歌手、アナウンサー……そして「日本語を正しく声に出したい」すべての人に必読の一冊。素敵な「こえ」と「からだ」を身につけるための誰にでもできるレッスン方法を解説。
【『声に出して読みたい日本語』の著者、大絶讃!】
「『惜しみなく愛は与える!』 鴻上さんの過剰なまでのサービス精神が炸裂した本書は、鴻上オリジナルはもちろん、英国演劇レッスンから、アレクサンダー・テクニーク、竹内敏晴のレッスンなど『てんこ盛り』の内容で、お買い得。演劇的身体は、これからの一般ジャパニーズに必要なもの。どれか一つでも自分の『技』として身につければ、コミュニケーションの次元が変わる、と身体技法マニアの私は思います。」(齋藤孝:明治大学助教授)


単なる現場からの経験論でなく、既存の方法論をきちんと踏まえて紹介してくれて、なおかつその方法論の出典(出どころ)を明らかにしてくれているのがとても良かった。今後の勉強にもつながる。
「発声」というと、すぐに歌を歌うための発声を思い浮かべるか、体育会系のとにかく腹から出す大声をイメージしがちだけれど、この本は、とにかく無理をしない、順を追ってウォーミングアップしながら、を大切にしている。
「身体」については、リラックスした(ニュートラル)身体づくりには役立つけれど、著者も指摘している通り、筋肉を使って他人にどう見られるかを意識した身体=「外側に意識を向けた身体づくり」の方法はこの本には載っていない。
でも、今後執筆の意向があるとのことなので、楽しみに待ちたい。



個人的には、力任せに自分のエネルギーをぶつけるだけの発声も、
見る側からすると好きなんだけれどね(笑)
posted by 研究員まゆ at 12:33| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月31日

『したたかなロシア演劇』

『したたかなロシア演劇―タガンカ劇場と現代ロシア演劇』

堀江新二 著
世界思想社
1997年7月1日 初版発行
定価2,048円(税込)
四六判/226頁
ISBN978-4-7907-0761-5

ソ連時代にその表現の斬新さを見せつけ世界に名を馳せたタガンカ劇場。ペレストロイカを越えて新しい表現を模索するさまざまな劇場。時代の推移につれ激動するロシアのなかで、したたかに生き続ける現代演劇の姿を追う。(世界思想社HPより)



演劇は非常に同時代性のものなのだなと、改めて思う。
そして、まさにその時にしか成立しないということが、演劇を論じることに困難さを与えているのです。でも一方で、その時にしか成立しえない芸術、ということが魅力でもある。
時代が変われば社会情勢も変わるが、何より「観客」が変わる。それは、国家権力が介入してもやはりそうなのだ。「観客」の力はどの時代でも圧倒的なパワーを持っている。
その「観客」によって左右されるという演劇の資質を、
脆弱で不安定な芸術ととらえるか、それとも、可能性の芸術ととらえるか。
いずれにせよ、「観客」は偉大だ。
posted by 研究員まゆ at 16:16| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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